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1月コラム 五十音表の不思議

日本語を話す方なら誰でも知っている「五十音表」。日本人は生まれた時からこの表を幾度となく見てきているはずです。ご存知ない方の為に説明申し上げると、五十音表というのは、タテ5マス×横10マス=50マスの表に日本語のひらがな(カタカナ)を入れていったものです。タテを「行」、横を「段」と呼びます。(例:カ行ウ段→「ク」)

もちろん、表には一文字ずつ入り、きれいに全部埋まりません。所々空白があります。手元の岩波国語辞典を開くと、「ヤ行イ段」「ヤ行エ段」「ワ行イ段〜エ段」の5文字分が()を付されています。なお、この表はヨコ11マスあり、「ん」だけが11行目に飛び出して配置されていますが、それはまた別の話で。

標準的な五十音表には、実は45文字(+「ん」)しかありません。理由はとてもシンプルで、「仮名ができる前に音がなくなったから」です。ちょっと何言ってるかわからないので、整理してみましょう。

高校古文で「聞こゆ(聞こえる)」という動詞があります。活用は「ヤ行下二段」。「きこえ/きこえ/きこゆ/きこゆる/きこゆれ/きこえよ」と活用します。よく見ると、「ゆ」と「え」が混ざっています。しかし、活用は「ヤ行」ですから、本来は「え」ではない文字が入っていたはずです。これこそが「ヤ行エ」です。アルファベットでは「ye」、無理にかな表記すると「いぇ」のような音であったろうと思われています。

奈良時代〜10世紀頃まで「え」と「いぇ」は区別されて発音されてきました。10世紀半ばに成立した「土佐日記」には、二つの「え」を区別した痕跡が残っていますし、「天地の詞(あめつちのことば:いろは歌のように、全ての文字を一文字ずつ使ったもの)」には「え」が二つ出てきていて、この区別があったことを示唆しています。しかし、10世紀以降、ふたつは混ざり、「え」に吸収されていきました。ひらがなが一応の完成を見たのがちょうど10世紀半ば頃と考えられています。つまり、ひらがなができた時には、既に「いぇ」は存在しなかったと見られています。

同じく、「い」と「ワ行イ(ゐ)」、「え」と「ワ行エ(ゑ)」も区別されてきましたが、こちらは13世紀頃まで区別が残っていました。ですので、ひらがなも作られ、残っています。

残る「ヤ行イ」と「ワ行ウ」は、歴史上、存在していた形跡がありません。そのため、ひらがなは存在しません。しかし、明治初期の教科書にはなぜか掲載されています。江戸時代後期〜明治時代になって初めて作られたのです。これは、「やっぱりア行とヤ行が同じなのはよくない!書き分けよう」という動きからです。しかし、その動きも長くは持たず、明治後期にもなれば再び消滅しています。

ちなみに、「ヴ(vu)」は「ワ行ウ」の扱いとされることがあります。これらの音を表した時に、「ヴ」と一緒に「ワ゛(va)」「ヲ゛(vo)」などが考案されたため、「ワ行」と分類されたようです。これらの発案者は、かの有名な福沢諭吉です。しかし、これらの表記法も浸透せず、「ヴァ」「ヴォ」に取って代わられています。

五十音表にここまで歴史や逸話があるとは、普段なかなか想像できません。でも、どんなことにも常に「Curious」でいると、身近なところから意外なことを見出すことができます。

 

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