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5月コラム 「くだらない」に関するくだらない話

辞書で「くだらない」を引くと、「価値がない」だの「つまらない」だの「取るに足らない」だの、まあ酷い言われようです。辞書を見るだけでdisられている気になります。あ、そうそう、すっかり定着した「ディスる(disる:馬鹿にする・批判する)」という言葉は、英語でもそのまま「dis」といいます。もとは「disrespect」の略語だったようですが、略した形が英語圏でも定着しているようです。

のっけから脱線してしまいました。「くだらない」話に戻ります。

この言葉、よく見ると意味不明です。「くだらない」が「価値がない」という意味だからといって、「くだる」は「価値がある」という意味にはなりません。そもそも「くだる」という言葉自体にネガティヴなイメージがあります。「くだる」に「ない」をつけると、逆にポジティヴな印象すら湧いてきます。それでは、なぜこんなことになっているのでしょう。

地方から東京に引っ越すことを「上京」と言います。東名高速の東京方面は「上り線」で、東京に向かう列車は「上り列車」です。このように、「のぼる」には、「(東)京に向かう」という意味が存在します。これは、「京=天皇のいるところ=高いところ」という発想からです。逆に、「下る」は、「(東)京から離れる」という意味になります。ということは、「くだらない」は「京から離れない=京にとどまっている」という意味になりそうです。しかし、それでも釈然としません。

江戸時代の首都は、東京ではなく京都の平安京にありました。つまり、「くだらない」は、「京都にとどまっている」ということ。では何がとどまっているのかといえば、それは「酒」です。この言葉、伏見などの酒蔵が発祥なのです。伏見や灘などの本場から江戸に送る酒を「下り酒」といいました。当時の首都は京都だったので、実に理にかなった言い方です。

一方で、江戸の酒は、そもそも下った場所で作られていて下りようがなく、質も悪かったので、江戸の酒は「くだらない」ものとして京都で扱われていたようなのです。「江戸のモノなんぞ飲めるか!」という気概すら感じることができますね。

以上が、「くだらない」=「価値がない」とされた歴史です。もちろんこれは一つの例に過ぎず、もっとたくさんの説が存在します。それらの説を色々調べてみるのもとても面白いですよ。普段よく使う言葉ほど、深い歴史と文化が刻まれています。そしてその歴史を紐解くと、新たな発見に満ち溢れているものです。

 

 

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